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南の島でパンを焼く@2009 その⑥ [旅 カオハガン島]

夕食後、8時過ぎに、ランダさんの家に向かった。
夜になると教会のある広場に面した縁側はぐるりと柵で覆われてしまっている。
でも、裏に回ると柵はなく、オープンで、入り口から明かりがもれている。
『マーヨンガビィ』と声をかけ入っていくと、ランダさんがすでに生地をこね始めていた。
大きなボウルにたっぷりの生地。
昨年と同じ。
家はきれいに整頓され、テーブルやイスもきちんと並べられて、パン作りに無駄のないようになっている。

カオハガン15.jpg

ランダさんのそばに座ると、ボウルをこちらに寄せるランダさん。
両手を使って力をこめてこねる。
なにぶん生地の量が多いので、とにかく力がいる。
昨年、汗だくになりながらぜいぜいはぁはぁこねていた私の姿をまねをしながら笑うランダさん。
まだ覚えているのねー(笑)。
『今年は大丈夫よ!』と返したものの、しばらくこねていると、やっぱり肩で息をしてしまう。
これは本当に大変な作業だと思う。
ランダさんは毎晩、こうやってひとりで黙々とこねているんだな。
村からは、ガンガンカラオケが聴こえてくる。
みんな熱唱している。

こねあがった生地を見たランダさんからOKがでる。
テーブルの近くにイスを3つ並べ、生地の入ったボウルを真ん中のイスに置く。
ボウルをはさんで左右にふたりで座り、生地の分割と丸めが始まる。
ランダさんは特に指示もしないで、生地を切り、私に渡す。
私も迷うことなく、生地をまるめ、大きさを確認して机のうえに置いていく。
ある程度丸めた生地がたまると、大きなテーブルの端から順に一列に10個ずつ並べ直していく。
不思議なくらい、呼吸のあったふたりの作業になっている。
もともとランダさんはそんなに口数が多くないのだけれど、パン生地を扱っているときは、さらに口数が少なくなって、黙々と作業する。

パンを丸めていると、オットと朗と陽が訪ねて来てくれた。
ランダさんはさっとイスを用意してくれ、座るように勧めると、また黙々と作業に戻る。
同じ大きさのパン生地がこれだけ並んでいるのは、朗も陽も見たことがない。
すごいー、とそばに立って、一緒に丸めを手伝ってくれる。
ランダさんもちらりと見ながら、朗に生地を渡したりしてくれる。
ランプひとつの明かりの中で、とても静かな時間。

そのうち、昼間めいっぱい海で遊んだ子供たちは眠くなってきた。
『全部でいくつパンができたか数えておいてね!おやすみー』とロッジに帰っていった。
ハハが夜ランダさんちに行くのも、ランダさんとパンを作っているのも、なんら不思議と思わず受け入れてくれている子供たち。
彼らにとって、パンとハハはどんなふうに映っているのだろう。
なんだか不思議で、そして心から感謝したいと思った。

その後もひたすら丸めていると、ランダさんの家の隣に住んでいるという女性がやってきた。
黙々とやっていたランダさんも少し余裕が出てきて、楽しそうにおしゃべりしながら作業する。
すると今度は元気な酔っ払い、ジュニオールとその友達がやってきた。
オレたちはランダのボディーガードだぜー! ランダはsingleだから、ボディーガードが必要なのさー! ・・・だそうで(苦笑)。
カオハガンにボディーガードなんていらんでしょうが! とつっこみながら、みんなで大笑いして、家の中が急に明るくなる。
いい気分で酔っ払った彼らは、大きな声で延々冗談を言い続け、そのうちカラオケに出かけて行った。
どんなボディーガードよねえ、まったく(笑)。

まるめた生地は全部で129個。
ずらりと並ぶ・・・壮観。

カオハガン16.jpg

昨年同様、休むことなく、最初に丸めた生地から順に、ココナッツのフィリングを包んでいく。
平らに延ばした生地に、ココナッツと黒砂糖を混ぜたフィリングをひとつまみのせ、生地の半分を折り曲げフィリングの上にかぶせ、ふちを指でちょんちょんと押さえつけ、大きなぎょうざ形にする。
これもランダさんは、何も指示することなく、すっかり任せてやらせてくれる。

『また、Japanese風のを作ってもいい?』と聞くと、もちろん、とランダさん。
でも、昨年みたいに形を変えるだけでなく、中のフィリングもJapanese風にしたいんだけど・・・と言うと、少々怪訝な表情になったランダさん。
やっぱりだめかな・・・と思いつつ、あんこを差し出すと、もっと怪訝な顔になってあんこを見ている。
一緒にいた隣の家の女性も、何これは!?と、怪しい顔つきになる。
・・・確かに、あんこは色が美しいわけではないので、初めて見る人には、??? かもしれない。
でも、アンドーナツにしたら、すっごくおいしいと思うんだ。
封を切って味見をしてもらうと、ランダさんはうんうんと大きくうなずいて、『Good!』。
隣の家の女性も、おいしいと言ってくれる。

かくして、ランダさんからOKが出たので、ココナッツのフィリングがなくなった後、あんこをフィリングにする。
形はどうするのか?とランダさんに聞かれ、うーん・・・ココナッツのシャーコイとは別の形にしたいけど、揚げることを考えるとあんまり凝ってもね・・・ということで、丸くて平らなおなじみのアンドーナツ形にする。
『OK!』と言うと、ランダさんも同様にアンドーナツを作り始めた。
カオハガンで、ランダさんとアンドーナツを作っている・・・不思議だ。

あとは、何もフィリングを入れない生地をねじってツイスト形も作る。
生地をまた10個ずつ丁寧に並べ、布をかけ、片付けて、終了。

明日の朝は。3時半から揚げるという。早い!
もう、夜10時過ぎている。
早くふくらむから早くから揚げるのだというようなことを言っていた。
今日は材料の量りこみを見られなかったけれど、生地の触感からしても、やわらかく伸びがよく、昨年の生地よりもイーストの量を増やしたのだということがわかる。
だから揚げる時間も早くなったんだろう。

明日の朝、3時半、と約束してロッジへ帰った。


~南の島でパンを焼く@2009 その⑦ に続く


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